キミは海の底に沈む【完】
「その時の担任は、お前が毎日忘れるから、記憶出来ないから、みんなでサポートしていこうって言ってた」
「……」
「そんで、家が近い…俺と潮が、お前を家まで送る事になった。正直、俺は嫌だった。だってめんどくさいだろ。お前をいちいち家まで送るんだぞ?遊びたい日もあるっつーのに」
「……」
「けど、潮は違った。お前をサポートしてた。あいつは昔から優しかったから。置いて帰るかって俺が言った時も、潮はちゃんと送っていってた」
「……」
「それが1ヶ月ぐらい続いた時、潮が…お前に対して怒ってた。理由を聞いても、教えてくんなかったけど…」
「……」
「それから潮がお前を虐めだした、俺は元々お前をよく思ってなかったから、俺もお前を虐めてた。つーか、実際は潮より酷いことをしてたし」
「……」
「今思えば、潮は虐めてたけどちゃんと家までお前を送ってた」
「……」
「そんな日が続いて。ある日、お前の記憶が失うようになった事故の原因が、海で溺れたからって事を知った」
「…海…?」
「ああ、親たちが話してた」
「……」
「それを聞いて、泳げねぇならプールに落としてやろうってなって。俺が突き落とした。──この前、お前に潮が突き落としたって言ったけど、あれは嘘で、俺がプールに突き落としたんだよ」
いつの、話だろうか。
過去の私に話したらしい。
「そしたらお前が泣いて、喚いて、叫んで。頭を抱えて謝りだした。思い出したくない記憶を思い出したみたいに、泣いて──…、それを見た潮がプールに飛び込んでお前を助けてた」
「……」
「そっから潮は、お前を虐める事はなくなった。学校ん中でも、外でも、ずっとお前のそばにいるようになった」
「……」
「俺らは幼稚園から仲良くて、ずっと一緒だった。でも、潮がお前と一緒にいるようになって…、次第にクラスみんなでサポートするのが、潮個人のサポートに変わっていった」
「…潮くんだけ…?」
「みんな、めんどくさいって思ってたからな。毎日毎日、トイレの場所を教える奴もいたんだ、面倒だろ」
「……」
「潮は、転校当初から、お前が好きだったらしい。意味分かんなかったけど」
「……」
「潮が、ずっと一緒にしてた野球を辞めるって言った時は、俺めちゃくちゃ腹が立って。なんでこの女のためにって」
「……」
「お前に友達がいないって理由で、潮がずっとそばにいた。俺の方が付き合い長いのに、なんでって…。俺よりもお前を優先した事にムカついて仕方なかった」
「……」
「やめとけよって言っても、潮はやめなかった。ムカついたけど、それでも、好きなんだっていう、潮の言葉を必死に理解しようとして…。潮が野球をやめたことに、文句は言わなくなった。──けど、言わねぇけど、お前、すぐ忘れるだろ。潮がどれだけお前に尽くしても、お前はすぐに忘れるだろ!」
怒鳴る那月くんは、私の方を見ない。
「…お前は、なんも覚えてない」
「……」
「全く、何も…」
「……」
「仲良く話してんのを見たと思えば、次の日には潮に近づくなって言ってるお前がいる…。お前は潮の気持ちを全く考えてねぇ。潮がどれだけ頑張って努力してるか知らねぇだろ!!」
「……」
「お前からすれば、毎日が他人だもんな」
「……」
「7年間ずっと、サポートしてる潮が怖くて、俺の学校に来るぐらいだもんな?」
那月くんの学校…。
「潮が可哀想で見てられない」
「……」
「だから、お前の記憶が戻るように、もう1回プールに落としてやった」
「……」
「この現状を変えたかった。だからお前の日記も川に捨てた。潮が拾ってたけど、どうせ読めねぇだろ」
「……」
「でも、潮は、お前の記憶が戻らないように今でも必死だ。ずっとお前を守ってる」
……──え?
「俺に潮を貸してくれ。好きでもねぇんなら潮を解放してくれよ」
「……」
「今回も、簡単に俺の方に来やがって…」
「……」
「潮のどこが怖い?! 言ってみろ!!」
「……」
「親友だった俺を…、お前を傷つけたからって理由で…。潮はお前に対してずっと優しかっただろ!! 怖いところなんかねぇだろ!!」
「……」
「なんでお前が泣く」
「……」
「泣きたいのは潮の方だろ!」
「…っ……」
「全部忘れるお前が、潮を傷つけるんだろ!!」
いつの間にか、私の方に振り向いていた彼が、「なあ」と、呼びかけてくる。
「お前もう、記憶できるんだろ?」
両手で顔をおさえる私は、何も言うことが出来ない…。
「だったら、もう、忘れないでくれよ」
「…っ、」
「他のことはいい、潮のことは絶対に忘れないでくれ」
目の奥が熱い。
「頼むから、」
「……、…」
「お前が今、潮を好きじゃなくても…。潮の事は絶対に忘れないでくれ……」
「……」
「そんで、家が近い…俺と潮が、お前を家まで送る事になった。正直、俺は嫌だった。だってめんどくさいだろ。お前をいちいち家まで送るんだぞ?遊びたい日もあるっつーのに」
「……」
「けど、潮は違った。お前をサポートしてた。あいつは昔から優しかったから。置いて帰るかって俺が言った時も、潮はちゃんと送っていってた」
「……」
「それが1ヶ月ぐらい続いた時、潮が…お前に対して怒ってた。理由を聞いても、教えてくんなかったけど…」
「……」
「それから潮がお前を虐めだした、俺は元々お前をよく思ってなかったから、俺もお前を虐めてた。つーか、実際は潮より酷いことをしてたし」
「……」
「今思えば、潮は虐めてたけどちゃんと家までお前を送ってた」
「……」
「そんな日が続いて。ある日、お前の記憶が失うようになった事故の原因が、海で溺れたからって事を知った」
「…海…?」
「ああ、親たちが話してた」
「……」
「それを聞いて、泳げねぇならプールに落としてやろうってなって。俺が突き落とした。──この前、お前に潮が突き落としたって言ったけど、あれは嘘で、俺がプールに突き落としたんだよ」
いつの、話だろうか。
過去の私に話したらしい。
「そしたらお前が泣いて、喚いて、叫んで。頭を抱えて謝りだした。思い出したくない記憶を思い出したみたいに、泣いて──…、それを見た潮がプールに飛び込んでお前を助けてた」
「……」
「そっから潮は、お前を虐める事はなくなった。学校ん中でも、外でも、ずっとお前のそばにいるようになった」
「……」
「俺らは幼稚園から仲良くて、ずっと一緒だった。でも、潮がお前と一緒にいるようになって…、次第にクラスみんなでサポートするのが、潮個人のサポートに変わっていった」
「…潮くんだけ…?」
「みんな、めんどくさいって思ってたからな。毎日毎日、トイレの場所を教える奴もいたんだ、面倒だろ」
「……」
「潮は、転校当初から、お前が好きだったらしい。意味分かんなかったけど」
「……」
「潮が、ずっと一緒にしてた野球を辞めるって言った時は、俺めちゃくちゃ腹が立って。なんでこの女のためにって」
「……」
「お前に友達がいないって理由で、潮がずっとそばにいた。俺の方が付き合い長いのに、なんでって…。俺よりもお前を優先した事にムカついて仕方なかった」
「……」
「やめとけよって言っても、潮はやめなかった。ムカついたけど、それでも、好きなんだっていう、潮の言葉を必死に理解しようとして…。潮が野球をやめたことに、文句は言わなくなった。──けど、言わねぇけど、お前、すぐ忘れるだろ。潮がどれだけお前に尽くしても、お前はすぐに忘れるだろ!」
怒鳴る那月くんは、私の方を見ない。
「…お前は、なんも覚えてない」
「……」
「全く、何も…」
「……」
「仲良く話してんのを見たと思えば、次の日には潮に近づくなって言ってるお前がいる…。お前は潮の気持ちを全く考えてねぇ。潮がどれだけ頑張って努力してるか知らねぇだろ!!」
「……」
「お前からすれば、毎日が他人だもんな」
「……」
「7年間ずっと、サポートしてる潮が怖くて、俺の学校に来るぐらいだもんな?」
那月くんの学校…。
「潮が可哀想で見てられない」
「……」
「だから、お前の記憶が戻るように、もう1回プールに落としてやった」
「……」
「この現状を変えたかった。だからお前の日記も川に捨てた。潮が拾ってたけど、どうせ読めねぇだろ」
「……」
「でも、潮は、お前の記憶が戻らないように今でも必死だ。ずっとお前を守ってる」
……──え?
「俺に潮を貸してくれ。好きでもねぇんなら潮を解放してくれよ」
「……」
「今回も、簡単に俺の方に来やがって…」
「……」
「潮のどこが怖い?! 言ってみろ!!」
「……」
「親友だった俺を…、お前を傷つけたからって理由で…。潮はお前に対してずっと優しかっただろ!! 怖いところなんかねぇだろ!!」
「……」
「なんでお前が泣く」
「……」
「泣きたいのは潮の方だろ!」
「…っ……」
「全部忘れるお前が、潮を傷つけるんだろ!!」
いつの間にか、私の方に振り向いていた彼が、「なあ」と、呼びかけてくる。
「お前もう、記憶できるんだろ?」
両手で顔をおさえる私は、何も言うことが出来ない…。
「だったら、もう、忘れないでくれよ」
「…っ、」
「他のことはいい、潮のことは絶対に忘れないでくれ」
目の奥が熱い。
「頼むから、」
「……、…」
「お前が今、潮を好きじゃなくても…。潮の事は絶対に忘れないでくれ……」