激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
怒りで唇が震えてくる。
それを落ち着けるように奥歯を噛み締めた私の頭の上に香椎さんは手の平を載せる。
視線を上げると目が合った香椎さんは頭をぽんぽんと二回撫でた。
「発信者情報開示請求は、投稿から時間が経てば発信者の特定が難しくなる」
「そうなんですか?」
「プロバイダのほうで開示請求に必要な情報を残している期間がだいたい三か月程度なんだ」
三か月……。
それじゃあ、初めに書き込まれたものはあと少しで特定も難しくなるってことなんだ。
「事実無根の書き込みで、君の店の信用が落ちるかもしれない。俺に、この件任せてもらえないか」
「え……でも、私、今すぐにはお願いできないです」
「なぜ?」
「着手金の用意ができないから」
それが依頼を見送った最大の理由。
お金に余裕があれば、悩まずあの日にお願いしていた。
このまま見過ごすことはできないけれど、先立つものがなければどうしようもない。