激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「京香?」
考え込んでしまった私へ、香椎さんが名前で呼びかける。
ハッとして顔を上げ、目が合うと香椎さんは不思議そうに小首を傾げた。
「何を考えてる」
「え……」
「難しい顔をしてるから」
香椎さんの切れ長の目は、私の心情を今にも見破りそう。
暗雲が立ち込めるようにもやもやとし始めた心の内を、静かに口を開き言葉に変えていく。
「もしかしたら、自分の知らぬ間に誰かを傷つけてしまったかもしれないって、いろいろ考えていたら思えてきて。それなら、もしかしたらこんな風に書かれたりしても仕方がないのかなって。それくらい、相手を傷つけていたのなら」
こんな嫌がらせを受ける意味がわからない。
そう強く思いながらも、これだけの嫌がらせをされるというのは、私自身にも非があるのではないかという考えも芽生えだす。
私にとって悪気のなかった出来事でも、相手にとってはショックを受けたり怒りを覚えることもあるかもしれない。受け取る側がどう感じるか。
子どもの頃、両親によく言われていたことを思い出した。
相手が嫌な思いをしたなら、たとえ自分に悪気がなくても謝りなさい、と。