激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


「たとえそうだったとしても、これは立派な名誉毀損だ」


 香椎さんのはっきりとした声に、目が覚めたようにハッとする。

 エスカレートしている嫌がらせで、気づかぬうちに参っていたのかもしれない。

 しょうがないのかもしれない、私に原因があるのかもしれない。

 そんな思考に傾いていっている。


「発信者の動機は様々だ。一方的な妬み、好意や執着によるものも少なくない。もちろん、相手の反応を楽しむだけの単なる愉快犯も。ウェブでの誹謗中傷は、恨みがあってという動機はむしろ少数なほうだ」


 親身になって真剣に話をしてくれる香椎さんの顔を見ていたら、鼻の奥が詰まったようにツンと痛くなる。

 あっという間に視界が潤んできて、慌てて顔を俯けた。

 椅子に掛けたまま、膝の上で重ねた自分の手をじっと見つめて涙を乾かす。

 そんな私へ香椎さんは静かに近づき、特に言葉を発することなく両手を回して抱き寄せた。

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