激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


「京香、来て」

 他に何か必要なものはないかと店内を見て歩いていると、後方から香椎さんに呼びかけられる。

 不意にこうして名前で呼ばれると鼓動がトクンと跳ねて、「はい」と振り返りながらも顔を赤く染めてないかと気がかりに思う。


「どうしましたか?」


 香椎さんに手招きをされて近寄ったそこに飾られていた商品を見て、思わず「わっ」と声を上げた。


「何これ、可愛い……!」


 そこにあったのは、真っ白いマグカップ。でも、ただのマグカップではない。ボディに凹凸で絵柄が入っているものだ。

 それがふたつのマグカップを繋げると横からダックスフントを見た絵になり、オシャレで珍しい初めて見るデザイン。

 胴の長いダックスフントならではだけど、デザイン性の高い商品だ。

 ふたつを並べて置いたときに非常に可愛い。


「お揃いで使うか」

「え? お揃いで」

「嫌か?」


 訊かれて即ぶんぶんと横に首を振る。

 嫌だとは思ってない。
 ただ、お揃いで買っていこうなんて言われて単純に驚いている。

 買い求める食器もみんな二枚組で選んだけれど、ふたつで絵柄が揃うマグカップはなんとなく訳が違う。

 そういうものを香椎さんが買おうなんて誘ってくるなんて思いもしなかった。

 これも、誰かにアピールするための小道具ってことなのかな……。

 最後に選んだマグカップを含め、買い求めたものは結構な品数に。

 支払いをする香椎さんは、まとめての配送を手配していた。

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