激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました

Side Touya




 彼女からは、見えない壁を一枚作られているのを感じている。

 それが遠慮なのか、一定の距離を保つためのガードなのか、真意はわからない。

 しかし、同居を始めてからも彼女から特別な好意を感じることはなく、これと言った変化は見られない。

 少しは意識させたくて、こうして手を繋いでみたり、一方的にキスで迫ったりもした。

 でも、驚いたようなリアクションと顔をほんのり赤くする止まり。

 一向になびいてこない彼女の様子は、自分史上経験のないことだ。


「他は、何を見ますか?」

「何か見たいものは?」

「そうですね……ルームウェア的なものを少し見たいです。寝るときに着るものがちょうどなくて」


 キッチン雑貨を買い求めたあと、店舗をあとにする際に再び細い手を取った。

 嫌がることもなく繋いでくれるけれど、本当は断れないだけではないかと少し気がかりに思う。

 それは、偽装婚約者になってほしいと半ば強引に、若干脅すような形で今の関係にこぎつけてしまったからだ。

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