激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


『大丈夫ですか? 腕、血が』


 肩にほんの少しかかる程度の緩やかに巻かれた髪。

 濃いアイメイクをしていなくてもはっきりとした二重瞼は、長いまつ毛が印象的だった。こちらを見上げる目に不覚にもどきりとさせられたのは今でも鮮明に覚えている。

 腕から出血?

 彼女に言われて見てみると、蒸し暑さで肘の下までカッターシャツを捲って出していた腕から、何かで切ったような傷があることに気がついた。

 少し流れて血が線状になっている。


『大丈夫だ』


 今さっき暴走車を避け、一度看板のようなものに体が当たった。そのときに腕をぶつけたのをなんとなく覚えているから、その際に負傷したのかもしれない。

 でも、痛みを感じて気がつくこともなかった。それだけ緊迫した状況だったのだと改めて思う。


『あの、とりあえずこれを』


 そう言って彼女が傍らに持つ小さなバッグをあさり、『あった!』と言って取り出したのは大判サイズの絆創膏だった。

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