激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
『洗ってから貼ったほうがいいと思うので、お渡しだけしておきますね』
『こんなものを持ち歩いて……?』
『はい。万が一っていうことがあるので。こんな風に役に立つかもしれないですから!』
絆創膏を受け取りながら感心している俺を、彼女は一歩距離を取って確認するように眺める。少し目を細めているのが印象的だった。
『スーツも汚れてしまってますし。失礼します!』
呆然としている俺に構わず、彼女はスーツについた汚れを見つけ、自分のタオルハンカチを叩いて払ってくれる。
テキパキとした行動を止めるタイミングを完全に失っていた。
『あ、突然すみません。私、怪しいものでは決してなく。ここの中にあるネイルサロンでネイリストをしているものです』
自分の素上を明かした彼女の指先は、確かにきらりと目を奪うほど光り輝いていた。
ピンク系のキラキラしたネイルが施されている。
『なぜ、見ず知らずの人間にこんな風に親切に?』
不思議だった。普通なら見て見ぬふりをしてしまいそうなものを、わざわざ声をかけてきたのだ。
土地柄なのかもしれないとも頭を過る。東京で同じことが起これば、きっと多くの人間が見て見ぬふりをするだろう。
疑問をぶつけた俺に、彼女は言った。