激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


 予定通り、十六時から最後のお客様のハンドネイルを施術した。

 予約外でお客様が来店することもなく、十七時半過ぎにはお店を閉める。


「京香ちゃん、お疲れ様」

 帰る支度をしている私に、丈さんが声をかけてくれる。


「お疲れ様です」

「夕飯、食べていかない? 誕生日なんだからご馳走する!」


 今日が私の誕生日だと知っている丈さんからありがたいお誘いが。だけれど、今日は急遽予定ができてしまった。


「ありがとうございます。それが今日──」


 お礼を口にしていたタイミングで店の入り口が開く。


「京香ちゃん、お誕生日おめでとう!」


 声高らかに入店してきたのは、八木沼さん。その手には巨大な花束を抱えている。


「八木沼さん、こんばんは」

「今日は京香ちゃんの誕生日だから、知り合いの花屋に特注でこれを作ってもらったんだ。どうぞ。お誕生日おめでとう!」


 八木沼さんから花束を差し出され、驚きながらも受け取る。


「えー! なんか、すみません。こんな豪華な花束」


 赤やピンク、オレンジ色の薔薇が何十本も束ねられた豪華な花束。あまりお目にかかれない大きなものだ。


「ありがとうございます。飾らせていただきますね」

「で、京香ちゃん。なんか言いかけたけど?」


 丈さんに訊かれ、話の途中だったと思い出す。

< 151 / 235 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop