激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
予定通り、十六時から最後のお客様のハンドネイルを施術した。
予約外でお客様が来店することもなく、十七時半過ぎにはお店を閉める。
「京香ちゃん、お疲れ様」
帰る支度をしている私に、丈さんが声をかけてくれる。
「お疲れ様です」
「夕飯、食べていかない? 誕生日なんだからご馳走する!」
今日が私の誕生日だと知っている丈さんからありがたいお誘いが。だけれど、今日は急遽予定ができてしまった。
「ありがとうございます。それが今日──」
お礼を口にしていたタイミングで店の入り口が開く。
「京香ちゃん、お誕生日おめでとう!」
声高らかに入店してきたのは、八木沼さん。その手には巨大な花束を抱えている。
「八木沼さん、こんばんは」
「今日は京香ちゃんの誕生日だから、知り合いの花屋に特注でこれを作ってもらったんだ。どうぞ。お誕生日おめでとう!」
八木沼さんから花束を差し出され、驚きながらも受け取る。
「えー! なんか、すみません。こんな豪華な花束」
赤やピンク、オレンジ色の薔薇が何十本も束ねられた豪華な花束。あまりお目にかかれない大きなものだ。
「ありがとうございます。飾らせていただきますね」
「で、京香ちゃん。なんか言いかけたけど?」
丈さんに訊かれ、話の途中だったと思い出す。