激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「あ、これは、お店のお客様に」
「客? 女性からいただいたのか、こんな情熱的な花束」
「いえ、男性のお客様です」
「男性の客?」
透哉さんは私からの返答が意外だったのか訊き返す。
最近は男性にも僅かながら利用客が増えつつある業界ではあるけれど、やはりまだまだ女性のものだという認識がほとんど。
透哉さんが訊き返すのはおかしいことではない。
「はい。最近は爪のお手入れを定期的にされる方もいますし、ネイルされる男性も少数ではありますがいるんですよ。そのお客様も、爪のケアでご贔屓にしてもらっていて」
「へぇ。それは初耳だな」
いつも通り助手席のドアを開け私に乗り込むように促し、「預かろう」と腕に抱く花束を受け取る。
後部座席のドアを開け、後ろのシートに花束を載せてくれた。
「食事の前に行きたいところがある」
「はい」
運転席に乗り込み車を出した透哉さんは、助手席に座る私にちらりと目を向け、その横顔に微笑を浮かべる。
その横顔がきれいで、ついじっと見つめていた。