激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「やっぱり忙しいのね、最近」
「……?」
「実乃梨ちゃんの結婚準備で忙しいみたいよ」
ドクっと心臓が大きく音を立てる。
平然と「そうなんですか?」と言いつつも、目眩を起こして倒れそうだ。
そこからどんな会話を交わし、理美さんを見送ったのか後になってみるとよく覚えていなかった。
たぶん、相槌を上手いこと打って話してはいたのだろうけど。
ここのところ、透哉さんは日々忙しそうにしている。
仕事では日帰り出張や、地方なら数日向こうに滞在することもあり、あまりマンションで顔を合わせることも多くない。
でも、忙しいのは仕事だけではなく、実乃梨との結婚準備もあるからに違いない。
もしかしたら、すでに実乃梨との新居があり、そっちで生活を始めているとか……。
透哉さんと実乃梨の現状を知ると一層焦燥感に襲われ、仕事が終わって帰宅後すぐに気づけば荷物をまとめ始めていた。
住まいをどうしようかなんて、もたもたしている場合ではない。悩むよりも先に、今すぐにでも出なくてはいけない。
そんな気持ちが一気に押し寄せて、駆り立てられるように出る支度を進める。
幸い、絶対に持って出なくてはならない荷物は手に持っていける量で収まりそうでホッとした。