激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「この口コミサイトへ任意開示を求めたところ、応じてはもらえなかった。これは想定の範囲内。任意開示に応じてもらえることは少ない」
「そうなんですね。じゃあ、だいたい裁判に?」
「そうだな。任意開示は稀と言えるかもしれない。そういうわけで、今回は裁判手続きを行っていった。のちに、プロバイダが判明して──」
透哉さんが資料に沿って説明してくれるのを目で追っていく。
今回の数々の書き込みに関して開示請求訴訟を起こした結果、裁判所が発信者の投稿した内容が名誉棄損に該当すると判断され、プロバイダに対して発信者情報を開示するよう求める判決が出されたことが記述されていた。
「……で、開示情報から発信者を特定できた。プロバイダから開示された情報がこれになる」
透哉さんがまた別の紙を私へと差し出す。
そこに、これまで私を苦しめてきた相手のことが載っているのかと思うと、受け取る手を出すのが一瞬躊躇われた。
「えっ……うそ」
目にした名前に、目を見開く。
開示された情報を見ても、名前も知らない人かもしれないと少し思っていた。
だけど、そこに記述されていたのはよく知る名前──八木沼さんの名だったのだ。