激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


「京香、この後帰宅する前に、もう少し時間もらえるか?」

「あ、はい」

「体調は大丈夫そう?」


 いつも私の体調を細やかに気にしてくれる透哉さん。

 優しい気持ちが嬉しくて、「大丈夫です」と答えながら自然と笑顔になっていた。


「じゃあ行くか」

「はい」


 出る支度をし、入り口へ向かっていく透哉さんの後に続く。

 ドアノブに手をかけた透哉さんが振り向き、不意に目が合う。

 どうしたのだろうかと見上げたままでいる私に、透哉さんは背を屈めて顔を近づけた。

 唇にそっと触れるだけのキスを落とし、透哉さんは微笑む。

 突然のことに動揺して視線が泳いだ私に、透哉さんは「可愛い反応」なんてからかうような口調で言った。

 ふたりきりだからといって、まさか事務所内でこんな風にキスされるとは思ってもみなかった。

 少し前まで真面目な弁護士の顔を見せていたのに、こんなふうに悪戯なキスを仕掛けてくるなんてずるい。おかげでドキドキが止まらなくなってしまった。

 事務所を出て、徒歩一、二分。妊婦の私でも全く気にならない近さのマンションのエントランスで、透哉さんは足を止める。

 私たちの住まいとは異なる、ワンルームマンションといった感じのエントランスだ。

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