激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「あとは、必要なものはおいおい足していけばいいだろう」
「そうですね。あとは、移転のお知らせをお客様にして……やることはまだたくさんありますけど、ここに落ち着きました」
透哉さんが運び入れた機材や材料を興味深そうに眺めながら、お客様用のチェアに腰を下ろす。
普段、見ることのないものが物珍しいのかもしれない。
「透哉さん、手をここに出してみてください」
思い立って私も自分の席に腰を下ろす。
私に手を出してと言われた透哉さんは、訳がわからなそうに「こうか?」と、手の平を差し出した。
「はい。あの、爪、磨いてもいいですか?」
「え、俺の?」
「はい」
私の申し出に、透哉さんはフッと笑う。
「いいけど、なんか変な気分だな」
「初めてだとそうですよね」
普段通り、出してもらった手の平を消毒して手の甲を上にしてもらう。
女性の手とは違う、骨張った長い指に血管の浮き出る手の甲。この手に触れられるたびにドキドキしている。
「失礼します」と断ってケアを始めと、透哉さんはやっぱり興味深そうに私の手元をじっと見つめ始めた。