激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「そうですか。では、この営業上の事柄については?」
「それも事実ではありません。そのような問い合わせ自体もらったことがない上、うちは保証期間を設けていますので、施術後一週間以内でしたら無償でお直しはすることになっています」
私からの説明を聞いた弁護士さんは「そうですか」と頷く。
「では、事実ではないということですね」
「はい。事実ではないです」
真意を求めるような弁護士さんの真っ直ぐな視線を受け、しっかりと答える。
「となると、名誉毀損になる可能性は十分にあります。それに、この書き込みは確実に営業妨害に当たる。名誉毀損とは、〝公然と事実を摘示し、他人の名誉を毀損すること〟をいいます。事実を摘示し、とはありますが、刑法第二百三十条では、〝その事実の有無にかかわらず〟と明記されているので、摘示された内容が事実がどうかに関わらず罪が成立します」
「やっぱり、そうなんですね……」
難しい言葉が並んで気後れしそうになるけれど、それは私が緊張しているからだろう。弁護士さんは素人にもわかりやすく説明してくれている。
しかし、刑法何条……とか、さらりと口から出てくるあたり、やっぱり六法なんかは頭に叩き込まれているのだろうと感心してしまう。