激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
香椎さんからさらりと出てきた挨拶に、釣られるようにして応えていた。
まるで誘導尋問にでも引っかかったよう。
ゾッとしている私を前に、香椎さんの薄い唇が微かに笑みを浮かべる。
どこか意地悪く口角を上げた彼の微笑を目に、血の気が引いていくのを感じていた。
この言い方、この表情。間違いなく私と会ったことをわかっている。確かめるために、試されたのだろうか。
どちらにせよ、私の返答は完全にアウトだ。
どうしようと混乱の渦に落ちていく最中、香椎さんは何事もなかったかのように通りがかったスタッフを呼び止めオーダーを始める。
自分の鼓動が激しく音を立てるのを聞きながら、ここからどう振る舞えばいいのか使い物にならない頭で必死に考えていた。
「ごめんなさいね、席を外して」
幸い、通話で席を外した潤子伯母さんがすぐに戻ってきてくれて、微妙な空気は緩和する。
しかし、そんな風に始まった偽りのお見合い席は、生じた混乱でほとんど頭が真っ白のまま進んでいった。