激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「どうする? それでも拒否して帰るか」
「…………」
「言ってたよな? 困ってる人放っておけないって。ほら、困ってる人がいるぞ、ここに」
昔から、困っている人がいるとすぐに手を差し伸べたくなる性分で、世話好きとか、お人よしとかよく言われていた。
学生時代は〝困ったときはきょんちゃん〟とクラスメイトみんなが言っていたくらいだ。
ある時、文化祭で劇をやる予定が、主役の子が前日から体調不良となり、主役不在にクラスが途方に暮れるという事件が起こった。
私は手先が器用という部分を生かし衣装係をしていて、たまたま主役の子の衣装を担当。衣装の出来を見るためもあり彼女のことをよく見ていた。
なんとそれが功を奏し、急遽代理を務めることになったのだ。
よく見ていたおかげで、セリフも彼女の演技も覚えていた。
なにより、クラスでつくり上げてきたものの集大成。なんとしてでもみんなで完走したいという想いが強かった。
そんな大きな出来事から、日常のプチ困った出来事まで、知ればついつい手を差し伸べてしまうのが私という人間だ。
でも、今日そんな話をしたのかすらもう記憶にない。
潤子伯母さんが実乃梨の話をするところ、うっかり私の話でもしてしまったのだろうか。
香椎さんの真っ直ぐの視線に、意を決して口を開く。