激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました


「わかりました。私のせいで〝伯母さん〟に迷惑をかけるわけにはいかないので、話は受けることにします」


 そう言った私に、香椎さんは再び端整な顔に微笑を浮かべた。


「交渉成立だな」


 香椎さんはスマートフォンを取り出し、「連絡先を」と言う。

 言われるがまま慌ててバッグからスマートフォンを出し、連絡先を交換した。


「今、住まいはどこに?」

「え? えっと、恵比寿から、電車で三十分ほどですけど」


 なぜそんなことを訊かれるのだろう。

 不思議に思いながらスマートフォンをバッグに押し込んでいると、香椎さんはまだ残っていたブレンドコーヒーのカップを手に取り口をつけた。


「見合い話が持ち上がったときに、新居も手配していたんだ。結局、断ろうと思い始めてあの部屋をどうしようかと思っていたが、ちょうどいい」

「え……? 新居?」

「詳細は後ほど送る。引っ越し業者の手配もするから、現住所を送っておいてくれ」

「え、あ、あの。まさか、一緒に住むって話してますか?」


 まさかという思い訊き返す。

 香椎さんはおもむろにソファを立ち上がり、平然と私を見下ろした。

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