激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
「あの、潤子伯母さん。香椎さんなんだけど、実乃梨と同じで、今回の縁談は遠慮しようと思っていたらしいの」
《え……そうなの?》
「うん。だから、今日はお時間ありがとうございましたって形で解散になって」
縁談は白紙になったということを、潤子伯母さんに不審に思われないよう平静を装って話す。
その間も私の鼓動はバクバク音を立てていて、電話のこちら側で胸に手を当てていた。
もちろん、香椎さんから要求されたことを言うわけにはいかない。
偽装婚約者になることも、同居するかもしれないことも。
《そうだったのね。それなら結果良かったわ。実乃梨が乗り気じゃないお見合いだったから、どちらにせよ見送りのご連絡はしなくちやいけないと思っていたの。香椎さんもそういうつもりだったのなら、丸く収まったわね》
「うん、そうですね」
《京香、今日は本当にありがとう。助かったわ》
「いえ、これくらいのことなら全然。良かったです」
電話の最後まで、潤子伯母さんは私に感謝の言葉を並べていた。
本当は重大なことを偽っているのに、私はそれを隠したまま通話を終わらせるしかなかった。