激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
目の錯覚かと思うほどわずかに顔が傾き、微かに鼻先が触れる。
あっと思ったときには唇に柔らかい感触が押し当たって、時が止まってしまったような感覚に陥った。
驚きすぎて目を開いたまま、離れていく香椎さんの顔を改めて目にする。
香椎さんは目が合うと微笑を浮かべ、私のシートベルトを装着して助手席のドアを閉めた。
動揺を極める私とは全く違い、当たり前のような顔をしてキスをしてきた香椎さん。
気づけばドッドッと鼓動が激しく音を立てて鳴っている。
運転席のドアが開き、となりに香椎さんが乗り込んでくる。
どこを見たらいいのかわからないまま手元に視線を落としていると、車は音なく滑らかに駐車場を出ていった。
「道案内を」
「あ、はい」
私は外に音が漏れていそうなほど心臓が音を立てているのに、香椎さんには全く動揺が見られない。むしろ何事もなかったかのようだ。
きっと、こんなことにも慣れているんだろうと思うと、道案内をしながらふっと気持ちが冷静になった。