激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
お見合い代理の次は婚約者代理。
でも、婚約者代理って、こんなことまで受け入れなくちゃいけないってことになるの……?
いやいやいや、そんなはずはないよね。
そもそも、これって単にからかわれてるってだけでは……。
「そろそろ着くぞ」
ぐるぐるとこの状況についていろいろなことを考えているうち、車窓には見慣れた景色が流れていた。もうここから徒歩数分でひとり暮らしの部屋に着く。
「ありがとうございます。そこの、信号の手前で大丈夫です」
家の目の前まで行ってもらうのは申し訳なく、近くの大通りで停車をお願いする。
香椎さんは私に言われた通りの場所で車を停車させた。
すぐに自分のシートベルトを外し、降車して助手席側へと回ってくる。
フロントガラスの前を通過していく姿を目にしながら、言うべきことを一瞬で頭の中で整理した。
「あの、今後のことですが、どういった流れになりますか? 仕事の都合と合わせなくてはならないので」
丁寧に助手席のドアを開けに来てくれた香椎さんを見上げ、そろりと車外に足を降ろす。
私が降車したドアを閉めた香椎さんが、クスッと微かに笑った気配を感じた。
「本当に揺れないんだな。大したもんだ」
何を言われているのかわからず、黙ったまま香椎さんを見上げる。
私と目が合った香椎さんはまたフッと意味深に笑みを浮かべた。