激情を抑えない俺様御曹司に、最愛を注がれ身ごもりました
静かだった鼓動が、香椎さんをひと目見た途端に音を立て始める。
この間会ったあと、部屋に帰ってもしばらく気持ちが落ち着かなかった。
香椎さんと過ごした数時間を何度も振り返り、いろいろな一瞬一瞬を思い出していた。
そのたびに鼓動を早めたり、顔を熱くしたりして、自分のおかしな状態に自分自身で戸惑った。
その日以降もふとしたときに香椎さんのことを思い出し、仕事中も頭の中に浮かんで慌てて脳内から追い払った。
どうしてそんなことになっているのかわからないけれど、きっとあの食事に出かけた日が濃厚だったからに違いない。
気持ちを整えるように深呼吸をし、近づいてくる姿に頭を下げる。
「無事についたな」
そう言った香椎さんは私の持つボストンバッグに手を伸ばす。
「ありがとうございます」
「何を持ってきたんだ?」
持参するものを詰め込むとそれなりの重さになり、片腕にかけて持っているとつい両手で持ちたくなるほどの重量があった。
それを、香椎さんは片手で軽々と持ち、私が何を持ってきたのか訊きながらダンベルでもやるように上下する。