岩のような愛を……
「そろそろ家に帰るわ。暗くなると山の中は危ないし」

颯がそう言いながら立ち上がると、大きくなった手を掴まれた。イワナガ姫はどこか不安げな顔で颯に訊ねる。

「颯、また来てくれる?」

「もちろんだよ!」

幼い頃にイワナガ姫がよくしてくれたように、頭を優しく撫でてみる。イワナガ姫の髪はサラリとしていて、まるで上質な絹のようだ。

「またな、イワナガ姫」

「颯、いつでも待ってるから」

頭から手を離し、颯は夕焼けが燃えていく山の中を走っていく。その後ろ姿を、両手を胸に当ててイワナガ姫が見つめていた。



それからも、颯は村と街を行き来する生活が続いた。そんなある日、颯は父親に呼び出される。父親は真剣な顔をしており、颯の緊張も自然と胸の中に生まれた。

「お前が出稼ぎで働きに行っている家から、手紙が届いた」

「えっ……」

「ぜひ、うちの娘の婿になってほしいとのことだ」

「それってつまり、縁談……」
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