岩のような愛を……

「イワナガ姫！」

颯が声をかけると、イワナガ姫は驚いたような顔をする。だが、一瞬でそれは花が咲いたような笑顔になり、「颯、いらっしゃい」と彼女は嬉しそうに言った。

イワナガ姫が岩から降り、「来てくれて嬉しい」と顔を赤くする。颯は頭をかき、少し緊張を覚えながら「報告があるんだ」と言い話し始めた。

「実は、出稼ぎ先の家の娘さんと結婚することが決まったんだ。それを言いに来た。イワナガ姫には一番に知ってほしくて」

緊張から俯きがちになってしまう。ドッドッドッと心臓が早くなっていくのを感じながらゆっくり颯が顔を上げると、イワナガ姫は予想もしていなかった顔をしていた。

彼女の顔には、感情がなかった。喜んでいるのかも驚いているのかもわからない。ただ「無」がそこに広がっている。

「イワナガ姫？」

胸が騒つき、颯は声をかける。イワナガ姫の体が小刻みに震え始め、その足元が硬い岩で覆われていく。

「酷い……酷い……酷い……。颯は、私とずっと一緒にいてくれるって言ったじゃない。私を裏切るなんて……。私がブスだから？」