岩のような愛を……
「こんなでっかい岩を運べるなんて、巨人くらいしかいないよな」

颯はそう言いながら岩に触れる。刹那、誰かに突き飛ばされるような感覚がし、颯の体は地面に倒れる。

「イテテ……」

地面に倒れてしまったことで、手足を擦り剥いてしまった。だが、颯の頭の中はすぐに何故突き飛ばされるような感覚がしたのか疑問でいっぱいになる。その答えはすぐにわかった。

「だ、大丈夫?」

消えてしまいそうなほど小さな声が颯の耳に聞こえた。目を開けると、オズオズとぎこちなく手を差し伸べてくれる女性がいた。

その女性は艶やかな黒髪を一つに結び、柄のほとんどない地味な黒い着物ドレスを着ている。手足は白く華奢で美しいのだが、何故か女性は顔を岩のお面で覆っていた。

先程まで人は颯一人しかおらず、気配すらも感じなかった。気配も、足音一つすら立てずに突然現れた女性に颯は驚き、なかなかその手を取ることができない。すると、女性の目に涙が浮かぶ。
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