赤い衝撃

「誰も結婚してないんだなぁ」

「龍二も?」

「彼女はいたけど・・・」

マサルは口篭った。

これ以上言うのは辞めよう、という

表情に見えたので、麻耶は話を変えた。

「マサルは、彼女?」

「いろんな女と付き合ったけど

 やっぱり、忘れられなくてさぁ

 未練たらしい男だよ。

 彼女は、結婚して子供も産んだけど」

「そっかぁ・・・

 私も、付き合った人はいたけど・・・」

麻耶もそれ以上、口に出来なかった。

暫く沈黙が続き

眼の前の料理もなかなか進まなかった。

マサルの眼には迷いの色が見えていた。

さっき言いかけた言葉を頭の中で

反芻しているのだろう。

在らぬ方向に眼を向けた後

ようやく麻耶に曖昧な笑顔を見せた。

そして、声を潜めて言った。

「兄貴さぁ・・・」

「うん?」

「抱けなかったんだ」

「何を?」



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