赤い衝撃
4月になると、新入社員が入ってくるので
派遣の仕事が極端に減ってしまう。
金銭的には困ることはなかったので
仕事も本気で探さなかった。
時間がたっぷりあるので
雑誌を見る事も多くなっていた。
春の新作・春限定・今年の夏は?
等の活字をやたらと眼にする。
麻耶は、ふと鏡で全身を写してみた。
家着なのでヨレヨレだけど
クローゼットを思い出しても
春らしい色の服はない。
長い髪も何年も同じだし。
ちょっとイメチェンして
気分も新たに就職活動に専念しようと
思った。
早速、梨恵の美容院に予約を入れた。
「何?男出来たの?」
梨恵は、眼を輝かせながら
席に案内してくれた。
「逆!出来るようにして!」
任せなさい!と腕まくりをして
梨恵は嬉しそうに鋏を手にした。
髪型に合わせて、化粧もしてくれて
なんだか別人になったみたい。
「綺麗になった妹を見てもらえば?」
「え?」
「兄貴二人に!」
梨恵は、白い歯を零し頷いた。