赤い衝撃
それでも彼は、動じなかった。
「いや、あまりにも可哀相だと思ってね」
「何がですか?仕事ですからっ!」
「仕事ですから!」
彼は鸚鵡返しで答え
麻耶に視線を投げかけた。
「此処の仕事はいつまで?」
「土曜日までです」
「麻耶、早く行きなさい!」
「はい!」
麻耶が彼に軽く頭を下げると
彼は、ヒラヒラと手を振りながら
目の前のビルに入って行った。
次の日も、先輩に怒られてる所を
彼に見られたけど
手を振っただけで何も言わずに通り過ぎる。
彼が入ったビルは、外資系の保険会社。
30歳くらいのエリートサラリーマンで
外資系だから英語がペラペラ?!
見るからに高そうなコートを羽織り
靴はピカピカだった。
麻耶は防寒ジャンパーを着て
髪を一つに束ね、軍手をして作業している。
麻耶は、自分の格好を見て溜息を吐き
住む世界が違うと思った。