赤い衝撃

龍二はいつの間にか

ソファで横になっていた。

寝顔を眺めながら麻耶は考えた。


-----お兄ちゃん。

   彼氏。

   旦那。


-----寝てみる?


また、梨恵の言葉が頭に浮かんだ。

麻耶はそっと近付き

彼の寝顔を見つめた。

お兄ちゃんならキス出来ない。

彼氏ならキス出来る。

旦那なら寝れる。



龍二は身動き一つしない。

麻耶は、強く眼を閉じ顔を近付けた。

だけど、もう少しの所で躊躇した。

彼の寝息だけが聞こえる。

また暫く見つめ、深呼吸をした。

今度は、眼を開けたまま近付く。

触れるか、触れないかのキス。

キスと言えそうもないほどの一瞬だった。

悪い事をしている感覚に襲われ

身体が震えだした。

マサルが寝ている部屋へ眼を向け

扉が閉まっている事に安堵した。

彼の寝顔も見れない。

座り込み呼吸を整える。

龍二に聞こえないように、静かに。



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