赤い衝撃
コテージの方から、車のエンジン音が
聞こえてきた。
泊り客が出発しているのだろう。
「私達も準備しようか?
マサルも起きてるだろうし」
「ああ」
前を歩く龍二の背中を見ながら
麻耶は思った。
大きな背中は、兄のものだと思ってた。
優しい言葉も妹を心配してたからだと。
こんな私の何処が良かったのか。
だけど、龍二がくれた好きの言葉で
気付いたような気もする。
ゆっくり好きになるよ。
兄としてではなく、男として。
そんなに難しい事でもないけどね。
麻耶は、早足で隣に行き
手を繋ぐと龍二も握ってくれた。
横目で麻耶を見下ろし
「今だけだ」
ぶっきらぼうに言った。
「じゃあ、好きになんないよぉ!」
麻耶は子供のように舌を出し
また駆け出した。
「好きにしろ!」
龍二が珍しく大きな声を出した。
麻耶は、後ろ手をヒラヒラと振り
コテージへ入って行った。