赤い衝撃
「取りあえず返して下さい!
電車が来ますから!」
少し強い口調で言い、もう一度手を出した。
「消さないと約束するなら」
うん、と言うまで返してくれそうに
なかった。
「分かりました」
「来週の土曜日に電話してくれ」
また、ヒラヒラと手を振りながら
出口へ向かった。
勝手な男、と愚痴りながら
不思議とイヤだとは感じなかった。
☆ ☆ ☆
この一週間ずっと考えていた。
電話するのか、しないのか。
先輩に怒られる度に、彼の顔が浮かぶ。
声をかけて貰っていたのが
励みになっていたのかも知れない。
話って何だろう。
それも気になっていたので
土曜日に仕事が終わって電話を掛けた。
「もしもし・・・
黒いジャンパーですけど・・・」
そう言えば、お互い名前も知らなかった。
「約束守ったな。今、何処だ?」
場所を伝えると、迎えに行く、と言い
一方的に電話を切られた。