赤い衝撃

誰にも言わずに家を出た。

何故か真っ赤な服を着たくなった。

玄関から少し歩いた所で

母親に呼び止められた。

振り向くと、眼は赤く口元を押えていた。

「どうしたの?」

返事をしないので、もう一度問い掛けて

ゆっくりと近付いていった。

「病院行くの?」

「あ、う、うん」

「良いの、それで?」

母親の眼には、今にも零れそうな程の

雫が光っていた。

「なんで泣いてるのぉ?」

母親だなぁ、全部知ってたんだ。

勝てないよね。

2~3日様子がおかしかったから

何か言ってくるのを待ってた。

だけど、何もしてあげられないから

黙って見守るしかなかった。

麻耶が決めた事に反対もしない。

だけど、この子が居た事は

忘れないでおこうね。

母と抱き合って泣いてた。

玄関先で、人目も気にせず

大きな声で泣いてた。



< 98 / 119 >

この作品をシェア

pagetop