ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
 メイ様、そんな大げさに絶望しなくても。
 あれ? でも、花が咲いてたってことは、私ったらレオ様と一緒にムーンライトフラワーを見たことになったりする……?


「もう……! 本当に悪役令嬢のクセにマヌケで使えないですねっ! いいわ、私が中に入って、レオと一緒に花を見ればいいのよ。どこから入るんですか? 門はどこ?!」
「メイ様、落ち着いて。きっと大丈夫よ、レオ様の気持ちはハッキリと決まっているわ」
「アンタには分からないのよ! 私がどれだけ必死で働いて、ゲームに課金してきたと思ってんの? 今日だってマティアスにムーンライトフラワーを持ってきてもらって、夜になったらレオを呼んで一緒に見ようと思ってたのに。アンタのせいで計画が滅茶苦茶よ!」


 すごい剣幕で怒りまくっているメイ様を何とか鎮めて、もう一度ジェラードに頼んで取り次いでもらいます。私はもうレオ様とお別れをしたので門には入らないけれど、最後にお二人を応援させて頂きますね。


「ジェラード……ごめんなさい。もう一度レオ様を呼んで頂いてもいいかしら。私ではなく、こちらのメイ様がお会いになりたいって」
「いいんですか? 殿下は先ほど、歓喜の叫びを上げてスキップしながら部屋に戻られましたが……」
「……いいのよ。きっと心のつっかえが取れてスッキリしたのね。私はこのまま帰りますから、メイ様をよろしく」


 スキップするほど私との別れが嬉しかったのかしら。
 この九年って一体何だったのかしらね。ついこの前、私にキスした時の気持ちは、嘘だったのかしら。何だかだんだん可笑しくなってきました。

 私はメイ様を送り出し、マティアスと一緒に再び夜道を戻ります。


「ごめん、コレット。本当にごめん」
「マティアス。あなた、メイ様と何を申し合わせしていたの? ムーンライトフラワーをメイ様に渡そうとしていた?」
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