ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「とにかく、コレット様は出て行って。私はレオと二人で話がしたいの」
「いいえ、私もレオ様にお話しがあるんです」


 レオ様に、言わなくちゃ。
 私は、レオ様のことが大好きです! って。

 でも、思いっきり漂う、今じゃない(・・・・・)感。
 それに、私ったら本当にこんなガラの悪い人のこと好きなんだっけ? ちょっと自信がなくなってきました。

 レオ様は、メイ様の肩を掴んで睨みをきかせます。


「とにかく、メイ。王家に嘘をついた罪は重いぞ。俺は宰相に言われて、お前の世話するだけで休暇の大半が潰れたんだ。その分、できなかった公務がどれだけあると思っているんだよ。婚約者のコレットに会う時間すら取れなかった。これは王家に対する業務妨害だぞ」
「ああ、足のことなら、まだ治ってないわよ。(いた)たたたた……!」


 いつもは悔しいほど演技が上手なのに、どうして急にメイ様は大根役者さんになってしまったのかしら。

 理由はどうあれ、ケガをしたフリをしてレオ様を騙したこと。ムーンライトフラワーをレオ様と一緒に見て、無理矢理ゲームのシナリオ通りに気持ちをコントロールしようとしたこと。
 私は、それが許せません。

 レオ様は、私が悪役令嬢コレット・リードであることを知りながら、乙女ゲームのシナリオ通りにならないように何年もかけて私を守ってくれていた。
 今度は、私がレオ様を守る番なのです!


「メイ様。そうやって無理矢理ムーンライトフラワーをレオ様と一緒に見て、貴女は幸せですか? 心からメイ様のことを愛してくれる人が、きっと他にいるはずです。人の心をコントロールして得られるものは、きっと真実の愛ではないのでは?」
「……ぅうるさぁいわよぉっ!! アンタはいいわよね。公爵家に生まれて、何不自由なく生活できて。どうせ学園を卒業したらレオと結婚するから、自分で仕事して稼いで生活して行かなきゃ……なんて考えたこともないんでしょ?」
「メイ様、それは違いますよ。私だって七歳の頃から自分の将来のことは……」
「うるさいうるさいうるさいっ! アンタには分からないのよ。必死で頑張っても全然売れなくてさ。でも、私よりも演技が下手な友達が、ちょっと派手な顔しているからって売れていったりするわけよ。でも、それってただの()じゃない。派手な顔の親から生まれたってだけで、実力なんて関係ないじゃん!」


 やはり、メイ様の前世は売れない役者さんだったようです。
 でも、彼女の気持ちは分かります。
 自分の努力だけではどうにもならないことが、この世界には存在しますもの。

 でも、それって全部前世に対するグチですよね……。この世界にまで、前世の恨みを持ち込まないで?


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