ヒロインよ、王太子ルートを選べ！
「私はディラン・エバンスと申します」


　目が『３』の形の男性は言いました。


「エバンス様……私、どこかでお会いしましたでしょうか？」
「いいえ、初めてかと思います。編み物にご興味が？」
「……あっ、ええ。そうなんです。刺繍は多少嗜むのですが、編み物にも挑戦してみたいなと思っていまして。そうしたら先ほど、エバンス様のことをお聞きしたので」


　ディラン・エバンス様は、私に向かって優しく微笑んだ……と思います。なんせ、目が細すぎて笑っているのかどうかハッキリしなくて、微笑んでいるのかどうかもよく分からないわね。

　それにしても、エバンス様とは今日が初対面みたいだけど、どこかで聞いたことのあるお名前と目の形状。ああ、でもどこで聞いたのか、全く思い出せないわ。


「具体的には、どういったものを編みたいと思われているのですか？」
「実は、最近親友に赤ちゃんが生まれたんです。冬に向けて、赤ちゃん用の手ぶくろなんて作れたら素敵だなって。できればすぐにでも編み始めたいんです。エバンス様がよろしければ、私に編み物を教えて頂けませんでしょうか」


　いいですね、と言って、エバンス様は優しく微笑んだ……んじゃないかな。多分そうです。


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