ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
 明後日に迫った誕生日パーティー。つまり私に残されたのは、あと二日。

 まずはエリオット様とリンゼイに、ルイーズへの贈り物を届けましょう。国外追放になっても困らないように、荷物も準備しておかなければ。メイを連れて行けるかどうかも分からないから、自分で持てるくらいの最低限の荷物にしておかないといけません。

 お仕事で不在のお兄様には、最後にご挨拶ができなくて残念です。お手紙を残していきましょう。

 そういえば、来月にはまた夏至がやって来ますね。まだ花は咲いてはいないだろうけど、最後にムーンライトフラワーの花畑も目に焼き付けておきたいわね。

 翌朝は早起きして、荷物の準備から始めます。普段着や日用品を詰め終わり、明日のパーティーで着るドレスの準備も。

 レオ様から「ドレス、送る……」と言うダイイングメッセージみたいなメモが届いていたけれど、今回はお断りしたの。今回はレオ様の誕生日だし、最後の衣装は自分で選びたかったから。

 レオ様と初めて会った時に着ていたのと同じ色にしようと思って、黄色とオレンジのドレスにしました。七歳だったあの頃は、太陽みたいなエリオット様の笑顔をイメージして選んだ色だったけれど、今となってはレオ様の金髪が先に思い浮かびます。


「ねえ、明日本当にパーティに行くの? その工事現場みたいな色合いのドレスで?」
「メイ、おはよう。工事現場って何よ、私が黒髪だから? このドレスは、レオ様の金髪をイメージしたの! パーティーにはちゃんと行くわよ。悪役令嬢らしく、堂々とね」
「……そう。じゃあ、もしアンタの言うとおり国外追放になったら私も一緒に行く! アンタみたいな間抜けを一人で世の中にほっぽり出したら、とんでもない事をしでかしそうよ」
「いいの? だってメイも、グランジュールにお父様とお母様がいるでしょ?」


 元々メイは、王都の宿屋『渡風亭(とふうてい)』の看板娘だったのです。私について来るよりも、家に戻った方がよっぽど幸せだと思います。


「宿屋の娘は儲からないわ。それに、アンタ放っておいたら悪人に攫われたり浮気されたり……こっちだって気が気じゃないわよ。二人で新天地で新しい仕事探しましょ! その大量の絵本を、正式に出版するっていうのどう? ひと儲けできるかも」
「絵本ね……こんな素人が作った絵本なんて買う人いないわよ。それにしても十冊くらい溜まっているわね……午後からリンゼイのところに行くから、一緒にプレゼントしてくるわ」


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