ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
 レオ様が私の手を少し引っ張って、背中に両手を回します。五カ月ぶりの抱擁をしながら、何だかやっぱりレオ様が痩せてしまったような気がして心配になりました。

 お仕事大変だったのよね。一人で頑張っていたのよね。

 骨張った背中に回す手に力が入ります。これであっさり仲直り……って言うことで、いいのかしら?

 五ヶ月間色々と悩んだ割に、呆気なかったわ。
 拍子抜けしている私の耳元で、レオ様が囁きます。


「……そんな辛い状況だったのに、俺のプロポーズを受けてくれてありがとう」
「……」


 ……ん? 今何と?


「プ、プロポーズですか」
「うん」
「……ええっと、プロポーズは私特に頂いてはおりませんけれど……」


 ……あ、あれ?

 私を抱きしめていた両腕がほどかれ、至近距離に見えるレオ様の顔が……今度は青から赤へ急激に変化……!

 ねえ、誰か! レオ様がおかしいわ! リトマス試験紙を頂戴!

 でも私、どう思い返してもプロポーズなんて受けてませんよ? つい先ほどまで、私はあのパーティーの場で断罪されるものとばかり思っていたのです。結婚の話が出ていたら、いくら妄想家の私だって「あれ、おかしいな?」くらいは考えるはずよ。

 いきなり国王陛下から「二人が結婚することになった」と言われて、VAR判定頼んじゃったくらいですもの。


< 197 / 244 >

この作品をシェア

pagetop