ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「コレット!!」
「……はいっ!?」


 俺はコレットの頬にちょっと触れてみた。勢いで大声を出した割に、行動は遠慮がちだなオイ。


「レオ様?」
「コレット……」


 何だかコレットの目がトロンとしているけど……やっぱりコレットも、今日が初夜だと思ってるよな。そんな潤んだ目をされたら、俺だってその気になってしまうだろ。

 頬に添えた手と反対の手で腰を引き寄せて、静かに唇を重ねる。

 何ヶ月かぶりのキスだったからか、コレットがいつもより緊張して固くなっている気がする。でもゴメン、ちょっとこれは止まらないかもしれない。

 静かだった部屋の中に、唇の触れる音が響いた。

 プロポーズした時は言わなかったけど、コレットの長い黒髪をいじるのも好きなんだ。この艶のある髪に触れることができる男は、世界に俺だけ。


 ……このままソファに押し倒していい?



(……ドドドド)


 ん? なんか外から太鼓みたいな音がドドドド……と、何だこれ?


(ドドドドドドド)


 音が……だんだん大きくなってる?


(ドドドドドドドドドドドド)


「……ジャーン!ジャジャジャーン! メイ様が来たわよぉぉ……って、アンタたちちょっとぉぉっ!! 何してんのよぉっ!」
「メイ! 来てくれたのね! 私、さっきメイを外で待たせたまま馬車に乗ってしまったから、どうしようかと思っていたの」
「うん? まあ、それはいいんだけどさ。レオが思いっ切り床に倒れたみたいね。すごい音したけど」
「まあっ! レオ様! やっぱり公務でお疲れなのよ。大丈夫ですか?」
「違うわよ。今レオはきっと、行き場のない煩悩を沈めてるんだと思うわ。コレットは後ろに下がってなさい。ああ、危ない危ない。走ってきて良かったわぁ」


 ……おい、メイ。王太子を足で踏むな。
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