ヒロインよ、王太子ルートを選べ!

第13話 恋人以上、夫婦未満

「おめでとうございます! 元気な男のお子様です!」


 陣痛が始まってから丸一日。やっとのことで聞こえた産声に、その場にいた人たちは皆歓喜の声を上げます。部屋の奥から元気な泣き声が聞こえて、国王陛下もレオ様もじっと座っていられずにソワソワ。


「……コレット、弟だって」
「そうですね、第二王子様ですね。おめでとうございます」
「名前はエドワードがいいと思う。レオとエド。呼びやすくていいだろ?」
「おい、レオナルド! 勝手に名前をつけるな……しかし、エドワードとははなかなか良い名前だな」


 強面の国王陛下も、第二王子様のことを目に入れても痛くないほどに可愛がるのでしょうね。レオ様だって今更弟か妹ができても……なんて恥ずかしがっていましたが、早くお部屋に入って赤ちゃんの顔が見たくてウズウズしているようです。


 レオ様と私が慌ただしく結婚してから二カ月。真夏を少し過ぎて暑さも落ち着いてきました。

 あら、結局陛下はお名前を、レオ様の案である『エドワード』様に決めるようですよ。

 エドワード・ブランデール第二王子様。

 あの国王陛下とレオ様のご家族ですから、きっと凶悪な一面の裏に優しさを秘めた、素敵な殿方に成長されるのでしょうね。今からある意味楽しみです。

 そう言えば、エリオット様とリンゼイの娘のルイーズと年が近いですよ。もしかしたら将来二人が婚約……なんてこともあるかもしれませんね。まさかルイーズも水濡れ大好きっ子だったりしますかね? もしそうなら少し厄介です。
 王宮の庭園が噴水だらけになったりするかも。

 ……まあ、先のことなのでゆっくり考えましょう。


 産まれたばかりのエドワード様を抱っこする国王陛下。そして、エドワード様を渡されてぎこちなく抱っこするレオ様。
 新しい命の誕生というのは、こうも皆に幸せを与えるものなのですね。この光景を見ているだけで、目頭が熱くなります。


「ご出産お疲れ様でございました。今日はお疲れでしょうから、ゆっくりお休みくださいね」


 高齢出産を乗り切った王妃様にお声をかけます。丸一日の陣痛と戦った王妃様は、目もうつろでかなりお疲れのご様子。王妃様の横では、侍医の弟子であるポーラ様がかいがいしく王妃様のお世話をしています。

 ポーラ様……こんなに働き者なのに。この前は私の勘違いで睨んでしまってごめんなさいね。きっと遠くて見えなかったと思うから、セーフにしておいて。


< 212 / 244 >

この作品をシェア

pagetop