ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「……ありがとう、コレット。無事に産むことができて良かった……。これからはレオナルドだけでなく、エドワードの事もよろしくね」
「はい、王妃様」
「それに、コレットの懐妊の報せも楽しみにしていますよ」
「えっ、私ですか? ああ、それはないです! 私たちは……(むぐっ)」


 王妃様に話している途中で突然後ろから、レオ様に口を塞がれます。


「母上、俺たちは先に失礼しますね。ゆっくりしてください。行くぞコレット!」
「(ふぁい)」


 口を塞がれたまま声にならない声でご挨拶をし、レオ様と共にお部屋を離れました。レオ様、苦しい……! 息できません!

 廊下に出てしばらく歩くと、レオ様の雷が思い切り私に落ちてきました。レオ様、そこは雷じゃなくて酸素吸入器を頂きたかった。


「……コレット! お前母上に変なことバラそうとしてただろ!」
「変なことって……? だって、王妃様が早く私の懐妊のニュースだなんて言うから、私たちはまだまだっていうことを……」 


 ぎゃあっ! 右手でグーを作って息でホーってしないでください! 殴る気満々じゃないですかっ!


「適当にごまかしておけばいいんだよ! 母上の噂好きは有名なんだから」


 さっきホーしたグーで、私の頬をグリグリするレオ様。
 はいはい、了解しました。言いませんよ。


「じゃあ、とりあえず俺は執務室に行くから。また夜に」
「はい……行ってらっしゃいませ」


 最近のレオ様は、周りに人が居るのにこういう去り際にチュッてしてくるから困ります。
 恥ずかしいのよね……周りの方達、その瞬間だけ別の方向を向いてあからさまに目を逸らすの。

 一切目を逸らさずにガン見してくるのは、メイだけ。

 レオ様の背中をお見送りして、私は自室に戻ります。

 そう言えば、先ほど私が言った話は本当のこと。私とレオ様は結婚して二カ月経ちますが、実は……


 まだ開幕戦を迎えておりません。
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