ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
【番外編】
番外編①:レオナルドのおみやげ
レオが十二歳、コレットが十歳の頃のお話です。
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「うわぁ……きれい!」
国王陛下の外遊に同行していたレオナルド殿下が、お土産を持ってきてくれました。虹のような色とりどりの刺繍糸でできた毬は、私の前世の記憶を思い起こさせてくれます。懐かしいですね。
「さっそくお庭で遊びたいです!」
お母さまにおねだりしてみるけれど、『せっかくだから殿下と遊んでもらいなさい』と言われ、二人でお庭に追い出されました。最近の殿下は急に背が伸びて、私を睨みつける目力がますます強くなっている気がします。
……この怖いお兄さんと、毬で遊ぶの? 毬の代わりに、私の方がボコボコに蹴られない?
殿下と手をつないで庭まで来ると、殿下が悪魔のような表情を浮かべました。
「……お前、俺が外国に行っている間、一人でのんびりしてたんだろ。鍛え直してやる」
殿下はそういうと、持っていた毬を……振りかぶって、投げました! えっ、これを取りに走れと?
驚いて殿下の方を振り返りますが、殿下は口元に不敵な笑みを浮かべ、あごで毬の方を指します。取りに……行きます! 行きますよ!
まるでワンちゃんと戯れるように、殿下はこの遊びを満喫しています。殿下の投げる毬を何度も取りに走り、私は息がすっかり上がっていますけどね。もう、限界です殿下……。
「あっ!」
拾い上げた毬を殿下の方に投げ返す時に、誤って池の中に落としてしまいました。せっかくのきれいな刺繍糸が汚れてしまうわ、早く拾わなくちゃ! 殿下と私は、池に駆け寄ります。
「……おい、拾えよ」
ですよね、拾うの私ですよね。手を伸ばしても届かないので、木の枝を使って引き寄せようとしますが、それでも全く届きません。
「殿下……取れないです……」
泣き出しそうな私をイライラした顔で見ていた殿下が、私の手を思い切り引っ張ります。
(池に落とされる…?)
そう思った瞬間に私の体がふわっと宙に浮き、殿下が私を抱っこしていました。
「殿下!」
「お前、せっかく俺が買ってきた土産なんだからな。自分で拾えよ」
殿下は私を抱っこしたまま、何と池の中にジャブジャブと入っていきます。
「お洋服が汚れますよ」
「うるさい、これで届くだろ。その枝で岸の方に寄せろよ」
私は殿下に抱っこされたまま手を伸ばし、木の枝で毬を押しました。毬が水から上がったのを見て、殿下は不機嫌な顔のまま池から上がります。
お洋服の裾が泥だらけ。遠くで待機していた殿下の従者の方が、慌ててこちらに走って来るのが見えました。
「殿下……」
「これからも、俺の土産を粗末にすんなよ!」
殿下はフンっと鼻を鳴らし、なぜか得意げな顔で従者の元に向かいます。
どうせ池に入るなら殿下が毬を取ってくれても良かったのに、なぜわざわざ私に取らせたのでしょう? 私は殿下が何を考えているのか分からず、ただただ彼の悪魔のような笑みだけを記憶に刻むこととなったのでした。
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「うわぁ……きれい!」
国王陛下の外遊に同行していたレオナルド殿下が、お土産を持ってきてくれました。虹のような色とりどりの刺繍糸でできた毬は、私の前世の記憶を思い起こさせてくれます。懐かしいですね。
「さっそくお庭で遊びたいです!」
お母さまにおねだりしてみるけれど、『せっかくだから殿下と遊んでもらいなさい』と言われ、二人でお庭に追い出されました。最近の殿下は急に背が伸びて、私を睨みつける目力がますます強くなっている気がします。
……この怖いお兄さんと、毬で遊ぶの? 毬の代わりに、私の方がボコボコに蹴られない?
殿下と手をつないで庭まで来ると、殿下が悪魔のような表情を浮かべました。
「……お前、俺が外国に行っている間、一人でのんびりしてたんだろ。鍛え直してやる」
殿下はそういうと、持っていた毬を……振りかぶって、投げました! えっ、これを取りに走れと?
驚いて殿下の方を振り返りますが、殿下は口元に不敵な笑みを浮かべ、あごで毬の方を指します。取りに……行きます! 行きますよ!
まるでワンちゃんと戯れるように、殿下はこの遊びを満喫しています。殿下の投げる毬を何度も取りに走り、私は息がすっかり上がっていますけどね。もう、限界です殿下……。
「あっ!」
拾い上げた毬を殿下の方に投げ返す時に、誤って池の中に落としてしまいました。せっかくのきれいな刺繍糸が汚れてしまうわ、早く拾わなくちゃ! 殿下と私は、池に駆け寄ります。
「……おい、拾えよ」
ですよね、拾うの私ですよね。手を伸ばしても届かないので、木の枝を使って引き寄せようとしますが、それでも全く届きません。
「殿下……取れないです……」
泣き出しそうな私をイライラした顔で見ていた殿下が、私の手を思い切り引っ張ります。
(池に落とされる…?)
そう思った瞬間に私の体がふわっと宙に浮き、殿下が私を抱っこしていました。
「殿下!」
「お前、せっかく俺が買ってきた土産なんだからな。自分で拾えよ」
殿下は私を抱っこしたまま、何と池の中にジャブジャブと入っていきます。
「お洋服が汚れますよ」
「うるさい、これで届くだろ。その枝で岸の方に寄せろよ」
私は殿下に抱っこされたまま手を伸ばし、木の枝で毬を押しました。毬が水から上がったのを見て、殿下は不機嫌な顔のまま池から上がります。
お洋服の裾が泥だらけ。遠くで待機していた殿下の従者の方が、慌ててこちらに走って来るのが見えました。
「殿下……」
「これからも、俺の土産を粗末にすんなよ!」
殿下はフンっと鼻を鳴らし、なぜか得意げな顔で従者の元に向かいます。
どうせ池に入るなら殿下が毬を取ってくれても良かったのに、なぜわざわざ私に取らせたのでしょう? 私は殿下が何を考えているのか分からず、ただただ彼の悪魔のような笑みだけを記憶に刻むこととなったのでした。