ヒロインよ、王太子ルートを選べ!


 私、コレット! 現在二十歳。
 実はもうすぐ二十一歳の誕生日なの。

 七歳でエリオット・スペンサー様に片思いをしちゃったくらい、人並みの乙女心や恥じらいは持ち合わせてるわ。

 ウェディングドレスって乙女の憧れよね。大好きな人と結婚して、毎日愛を囁かれる生活にも憧れる。好きな人には、着飾った可愛い姿を見せたいわよね。

 ……普通の女の子なら。

 私だって本当はそっち系だった。


 『大好きな人に丑の刻参りをする姿を披露したい系』の乙女ではなかったはずなのに。


「コ……コレット……一体これはどうした? その格好は……」
「レオ様こそ、なぜ? 三ヶ月は留守にされると思っていたのに……」


 レオ様がお戻りになるのは、来月の話だったはずよ。今ここにレオ様がいるってことは……私が呪いに気付いたって言う情報が、どこかから漏れたとか?

 ……待って。じゃあ、レオ様の呪いには共犯者がいるってこと?

 困惑する私に、これまた困惑顔のレオ様がジリジリと一歩ずつ近づいて来ます。


「コレット落ち着け。とりあえず、火を消すぞ」
「火? あ、ああ……ロウソクの火ですね。お願いします……」


 私は少し頭を下げて、レオ様が火をフッと吹き消す。


 ……そうだ!

 もうこれ、私の誕生日パーティーってことでいいんじゃない? 誕生日ケーキのロウソクに見立てて、頭にロウソク付けて待ってました! って誤魔化したらなんとかならないかしら。

 いやいや、何を自分の保身に走っちゃってるのよ。落ち着こう、私。

 今はこの状況を取り繕う方法を考えている場合じゃない。レオ様が他人を呪うに至ってしまった心の闇を、私が救ってあげるんじゃなかったの?


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