ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
「レオ様!」
「ど、どうした?」


 レオ様は熱そうに、指先だけで一生懸命私の頭から金属の輪を外そうとしています。


「レオ様こそ、どうなさったんですか。何か悩みがあるなら、誰かを呪う前に私に相談をして欲しかったです」
「呪う……? 何の話だ?」
「しらばっくれないでください! 証拠がこれです!」


 私は手に持っていた藁人形と五寸釘を、レオ様の目の前に差し出します。こんなものを揃えてしまうほど、あなたは何に追い詰められているの?


「これは……俺の……」
「レオ様、現にルイーズは今、呪いで苦しんでいるのですよ! 私がこんな格好をしてここにいるのはなぜだと思いますか?」
「いや……ごめん。それは本当に全然分からん」
「怖がらなくて大丈夫です。私はレオ様の味方ですから。だから、正直におっしゃって。一体これは何ですか?」


 藁人形と五寸釘をレオ様に渡します。そして、メイに目配せして人払いをしてもらいます。さあ、今はこの林に私とレオ様の二人きり。きちんと真実を話してくださるわよね。

 レオ様はしばらく自分の手の中の呪いグッズたちを見つめ、私に視線を移します。大丈夫、覚悟はできています。私も一緒にレオ様の罪を償いますから。
 エドワード様もいらっしゃるのだから、私たちがこの国から去ったとしてもきっと何とかなると思います。


「こっちは、この前エドワードと母上が庭で作った人形。エドワードが執務室までこれを持ってきてプレゼントしてくれたから、大切にしまっておいたんだけど……」


 ……なんということでしょう! エドワード様も、この呪いに一役買っていたなんて!
 これは大誤算だわ。グランジュール王国の大ピンチじゃないの。王妃様、もう一人産めるかしら?


「それにこっちは、手紙を開ける時に使うペーパーカッター。ザミニ石の原石でできているから、強度があるんだ。よく切れるから重宝してる」


 ああ、そうなのね。ペーパーカッター。ザミニ石の。

 便利よね。

 ……

 …………で、呪いは?


「では、この名前がびっしり書かれたリストは……なんですか?」


 何だか人形と釘の話だけだと呪いとは無関係な雰囲気が漂ってきちゃったけど、まだまだ証拠はありますからね。このリストの消し込みは、言い訳できないわよ。


「このリストは見られたくなかったな……」
「ええ、そうでしょうね。上から順番に、呪っていったのでしょう?」
「……だから、呪ってないって!」
「じゃあ、このリストはなんですか?!」
「それは……」


 レオ様! 私、ルイーズを助けたいの。早く真相を教えてください!
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