ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
 コレットも俺もお互いに謝り続け、ついに二人とも沈黙して下を向いてしまった。もう、この話題はやめよう。忘れて楽しく暮らそう。気持ちを切り替えようと俺が顔を上げた時、侍医が口を挟んできた。


「王太子妃殿下、もしご体調が優れないようでしたら診察させて頂きますが……」


 おい、空気読めよ! コレットが俺たちの話を聞いた時に泣いて逃げたってことは、妊娠してないってことだぞ!
 心の傷をこれ以上広げるな!
 侍医に怒ろうと思ったら、後頭部がまたズキッと痛んで声が出なかった。


「はい……では、診察をお願いします」


 コレットが言う。


「え、なんで? コレットやっぱり体調が悪いのか?」
「レオ様、ここまで来たらもう、隠し通すことはできません。私実は……」
「実は?」






「…………便秘なんですッ!!」



 べ、便秘……

 便秘?



「それで、腹触られるの嫌がってたのか……?」
「はい……結婚してからお肉とかお魚とか豪華なメニューを食べ過ぎたのか、徐々に悪化してきたんです。イモ類が食物繊維が多くていいと聞いたからお芋も食べてみたし、乗馬の動きが腸を刺激するって聞いてやってみたりしたんですけどやっぱりダメで……」


 便秘。
 便秘か。

 それを言うのが恥ずかしくて、診察も避けてたのか。便秘を妊娠と勘違いされて、恥ずかしくて泣いて逃げたのか?


「コレット、診てもらえ。便秘を馬鹿にするなよ。便秘で死ぬヤツだっているんだからな」
「ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。しかも何だか妊娠の期待までさせてしまって。でもレオ様。私だっていつかは子供が欲しいと思っています。妊娠するのを楽しみにもしてます。だから、もしそういう日が来たら、私からちゃんと言いますから……」


 コレット、子供のことはこれからも、二人で楽しみに待つことにしよう。まずは便秘を治せ。

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