ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
 大問題が発生しました。私、レオナルド殿下と婚約して以降、イジメられたことはあっても、イジメたことがございません。

 しかし今日、私はヒロインをイジメなければならない。今から図書室に行ってイジメ方を調べる? いやいや間に合わない。
 これはもう、普段から殿下が私にしている仕打ちをそのままマネするしかありません! 簡単じゃないですか。

 ……いざ、出陣!

 とりあえずは、ヒロインの後を尾けますね。


「レニー!」


 おっ! 早速メイ様はレニーを見つけます。レニーって誰ですか。なんかウケる。


「メイ! 久しぶりだね。入学おめでとう」


 そう言えば、殿下がメイ様に使った偽名がレニーでした。片手を制服のポケットに入れ、反対側の手を軽く挙げて挨拶する姿は、前世の少女マンガの高校生ヒーローのようです。外面は今日も絶好調ですね。金粉舞ってますよ。
 さあ、そろそろ私も二人の間に割り込みます。

 でも、入るタイミングがすごく難しいですね。

 前世の体育の授業で大縄跳びをした時のことを思い出しました。

 そして、殿下のお側にアラン・ゴールドウィンが見えます。もしかして、今この時がアランとの出会いイベント……でしたっけ? ちょっと早いような?
 アランルートの結末は、私の国外追放ですから。アランの目の前でメイ様をイジメるのは躊躇(ちゅうちょ)します。しかしメイ様に王太子ルートを選んでもらうには、この場でイジメないといけない。

 いきなり出てきた板挟みシチュエーションに少々パニックですが、背に腹は変えられないのでやります。
 行きますよ。


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