ヒロインよ、王太子ルートを選べ!
エリオットとコレットが二人で馬に乗る練習をしている姿を横目でチラチラ見ていると、急にコレットの馬が全速力で走り始めた。
馬好きのエリオットが、
「レイラ!」
と叫んで追いかけようとする。いや、ここは馬じゃなくてコレットの名前を呼んでやれ。
……そんなことよりも。
「エリオット! 僕が追うから、君は誰か助けを呼んできてくれ!」
そう言って俺はエリオットを引き留め、自分でコレットを追った。可愛いコレットを助けなければと言う気持ち半分、エリオットに任せたら危険だと言う気持ち半分。
なぜならその日は今にも雨が降りそうだったからだ。雨に濡れたコレットをエリオットが見たら……今思い返しても恐ろしい。
なんとか彼女を助けて雨宿りしていると、実はエリオットに助けて欲しくてわざと馬を暴走させたと白状した。
しかもそれだけじゃない。
彼女には前世があり、今のこの世界は前世で見た乙女ゲームとか言うものの世界と酷似しているのだと言い始めた。エリオットと仲良くなりたかった彼女は、そのゲームのヒロインがエリオットと仲良くなったきっかけである『馬の暴走』を自作自演したのだと。
にわかに信じがたい話だが、毎日が退屈だった俺は、その話にのめり込んだ。そしてその話を利用して、コレットに自分の想いを伝えることのないまま、彼女との婚約にこぎつけた。
現実世界にゲームのシナリオ通りの出来事が起こるのかを確かめるのが楽しみで、毎日うずうずした。
あの頃の俺は、本当に幼かったと思う。シナリオ通りになった場合にコレットに起こり得る不幸な未来を、全くイメージできていなかった。
時が経って、自分も少しは社会のことを知るようになり、段々とコレットの未来を具体的にイメージできるようになった。修道院に送られることの意味、国外追放された人の生活、平民に落とされた後の人の気持ち。彼女が将来そんな目に合うのかと思うと、心が恐怖でいっぱいになった。
コレットを守らねば、と思った。
子供なりにどうしたらいいかを必死で考えてもがいた。
でも、コレットは相変わらず俺に興味なしだ。彼女から拒絶されるのが怖くて、俺もコレットに冷たく接した。
そんな日々が何年も続いた。
馬好きのエリオットが、
「レイラ!」
と叫んで追いかけようとする。いや、ここは馬じゃなくてコレットの名前を呼んでやれ。
……そんなことよりも。
「エリオット! 僕が追うから、君は誰か助けを呼んできてくれ!」
そう言って俺はエリオットを引き留め、自分でコレットを追った。可愛いコレットを助けなければと言う気持ち半分、エリオットに任せたら危険だと言う気持ち半分。
なぜならその日は今にも雨が降りそうだったからだ。雨に濡れたコレットをエリオットが見たら……今思い返しても恐ろしい。
なんとか彼女を助けて雨宿りしていると、実はエリオットに助けて欲しくてわざと馬を暴走させたと白状した。
しかもそれだけじゃない。
彼女には前世があり、今のこの世界は前世で見た乙女ゲームとか言うものの世界と酷似しているのだと言い始めた。エリオットと仲良くなりたかった彼女は、そのゲームのヒロインがエリオットと仲良くなったきっかけである『馬の暴走』を自作自演したのだと。
にわかに信じがたい話だが、毎日が退屈だった俺は、その話にのめり込んだ。そしてその話を利用して、コレットに自分の想いを伝えることのないまま、彼女との婚約にこぎつけた。
現実世界にゲームのシナリオ通りの出来事が起こるのかを確かめるのが楽しみで、毎日うずうずした。
あの頃の俺は、本当に幼かったと思う。シナリオ通りになった場合にコレットに起こり得る不幸な未来を、全くイメージできていなかった。
時が経って、自分も少しは社会のことを知るようになり、段々とコレットの未来を具体的にイメージできるようになった。修道院に送られることの意味、国外追放された人の生活、平民に落とされた後の人の気持ち。彼女が将来そんな目に合うのかと思うと、心が恐怖でいっぱいになった。
コレットを守らねば、と思った。
子供なりにどうしたらいいかを必死で考えてもがいた。
でも、コレットは相変わらず俺に興味なしだ。彼女から拒絶されるのが怖くて、俺もコレットに冷たく接した。
そんな日々が何年も続いた。