【WEBTOON】断食魔女と肉食神官~拾った子供が聖女に選ばれた魔女のお話~【コミカライズ】
「ごめんなさい。わたしは貴方を――――わたし自身を、信じられません」


 前世で婚約者に捨てられてから思い知ったこと。
 人の心は変わる。
 どれほど愛していると思っても、簡単に裏切り、裏切られる。関係はいとも容易く壊れる。


 わたしは神官様を信じることができない。
 わたし自身を信じることができない。


 誰かを疑いながら生きていくのは辛い。
 心を預けて、信じ切って、あとになって裏切られるのが怖い。嫌われるのが怖い。

 他に好きな人ができたって言われてしまうぐらいなら、最初からなかったことにしてほしい。そしたら、苦しまないで済むもの。


「だったら、信じなくてもいいですよ」


 神官様がポツリと呟く。何故だろう。ズキンと胸が痛んだ。


(自分で突き放したくせに、バカだな)


 心のどこかで、粘ってほしいと思っていたんだろうか。説得してほしいと思っていたんだろうか。

 頑なに閉ざしていた扉をこじ開けてほしいって。
 もう一度誰かを信じてみたい。信じさせてほしい。

 愛されてみたい――――愛してみたいって。


 だけど、良かった。
 神官様の今のひとことで完全に頭が冷めた。


 愚かな自分をあざ笑いつつ、わたしは扉の鍵を開ける。
 だけど、チラリと目があったその刹那、神官様はわたしをギュッと抱きしめた。


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