【WEBTOON】断食魔女と肉食神官~拾った子供が聖女に選ばれた魔女のお話~【コミカライズ】
(どの口がそんなことを!)


 この女のせいで、マリアは死んでいたかもしれないのに! 健やかどころか、幸せどころか、母親の顔も、愛情も、何一つ知らないまま、死んでいたかもしれないのに。


 誰かをこんなにも憎いと思うのは、生まれてはじめてだった。
 この女の横っ面を思い切りぶん殴ってやりたい。マリアの痛みを思い知らせてやりたい。
 悔しくて悲しくて、涙が勝手に湧き上がってくる。

 前世で婚約を破棄されたときでさえ、ここまでの激情は抱かなかった。腸が煮えくり返って、本当におかしくなりそうなほどに苦しい。


「だけど、気が変わりました。
神官様――――実はこの子には、妹が居たのです。赤ちゃんのときの顔しか知りませんが、とても良く似た双子でした」


 女が言う。
 きっと、はじめて聞いた話なのだろう――――マリアと同じ顔をした女の子が目を丸くした。

 わたしは苦々しい思いで「そうですか」と相槌を打つ。


「止むに止まれぬ理由で、生まれてすぐに、とある森に置き去りにしました。とても申し訳なかった……。本当に、あの日のことを後悔しなかった日は、一日だってございません。
ですから、この子には妹の分まで、元気に大きく育ってほしいと思っていたのです。けれど――――」


 女はわたしの手を握り、下から顔を覗き込んできた。


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