幸せな離婚
シンっと静まり返った寝室内に自分の心臓の音が響いている。
呼吸が早くなり、私は崩れるようにベッドに座り込んだ。
健太郎……まさか……浮気してるの……?
心の中で呟く。
メッセージの差出人は「みか」だった。あの文体からも相手が女性であるのは間違いない。
今日も楽しかったってことはいつも会ってるってこと?
でも、今日は上司にお寿司をご馳走してもらったって言ってなかった……?
そこにその女性も同席していたならば同じ職場の人だ。
まれに人との距離感が近い女性もいるし、100%浮気とは言い切れない。
だけど……。
「……ううん、まさか。考えすぎだよ」
必死になって誤魔化す。
様々な感情がごちゃごちゃになって絡まり合って、頭の中が整理できない。
健太郎がお風呂から出て寝室に戻ってきた後も、私はそわそわと落ち着かない気持ちを持て余していた。
「あのさ、また嫌味言われんの嫌だから先に言っとく。明日も飯いらないから」
「うん、分かった」
考えのまとまらない私は健太郎にどんな顔をすればいいのか分からなかった。
小さく答えてベッドに入り背中を向けると、何の断りもなく部屋の電気が消された。
隣のベッドからすぐにけたたましいいびきが聞こえる。
「寝られない……」
目をつぶってもさっきのメッセージがグルグルと頭を巡り、私はなかなか眠ることができなかった。

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