幸せな離婚
「いえ、お話するのは今日限りで」
「え……?」
「今日のことはもう忘れて下さい」
「どうして……?」
瀬戸さんは小さく頭を下げると私に背中を向け駅のある方向へ歩いていく。
どうして今日限りなの……?
後日お礼の品を持って伺おうと思ってたのに……。
モヤモヤする気持ちを吹っ切るようにペットボトルをギュッと握り締める。
さっきまでうるさいぐらいに鳴いていた蝉の声がなぜか遠くに感じた。

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